コラム
「3R」(スリーアール)とは?リサイクルの現状と、理想的な取り組みについて考える
リサイクル
2021/10/20
日常生活のなかから排出されるごみの分別や再資源化は、日本が取り組むべき重要な課題のひとつです。特に、事業所から出る廃棄物の量は一般家庭の比ではないため、環境省は「ごみ処理基本計画策定指針 」(2016年)のなかで、3R(スリーアール)の推進について言及しています。
ごみを減らし、限りある資源を有効活用するうえでは、この「3R」に対する正しい理解が欠かせません。この記事では、そんな「3R」の概要や覚えておきたい優先順位、そして現在の日本が抱えるリサイクルの課題についてご説明します。
「3R」とは?それぞれの定義と違い
今日におけるごみの再資源化において、最も基本的な考え方となっているのが「3R」です。まずは、3Rの定義やそれぞれの違いについて確認しておきましょう。
「3R」はごみの再資源化に必要な、最も基本的な行動
3Rは、「リデュース(Reduce)」「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」の頭文字を取って作られた言葉です。これらの「R」は、ごみの再資源化に必要な最も基本的な行動を意味しています。
リデュース
「リデュース(Reduce)」は「減らす」という意味を持つ言葉で、製品を作る際に使う資源や廃棄物の量そのものを減らす取り組みを指します。特に商品を作って販売している事業所にとっては重要なアクションと言えるでしょう。事業所の取り組みとしては、「再利用可能な容器に入れて販売する」「簡易包装をした状態で販売する」といった事例が代表的です。
今日ではその意味合いが派生しつつあり、「耐久性が高く、長期にわたって使い続けられる製品を販売すること」なども、リデュースに該当するとされています。
リユース
「リユース(Reuse)」は、「再び使う」という意味を持った言葉です。3Rのひとつとして考えると、「再使用」と訳すのが分かりやすいかもしれません。使用済み製品やその一部をごみとして廃棄するのではなく、再使用するための取り組みをリユースと言います。
事業所におけるリユース事例には、使用済み製品の回収や再使用、リユースを前提とした再利用可能な資源の活用、そのための回収システムの構築などが挙げられます。また、電化製品などのメーカーであれば、検査や修理の技術を向上し、一度壊れてしまった製品を再使用できるようにすることもリユース的な行動と言えるでしょう。
リサイクル
「再生利用する」といった意味を持つ「リサイクル(Recycle)」ですが、意味だけを聞くとリユースとの違いが分かりにくいかもしれません。使用済み製品などを再び“同じもの”として使用するリユースに対し、リサイクルは「原料ベースに変えて再利用する」という違いがあります。ごみや資源物を溶かして別の製品の原料にしたり、化学分解して油やガスにしたりするなど形を変えて別の用途で利用するのがリサイクルです。
リサイクルの一例としては、ペットボトルの再生利用が挙げられます。資源ごみとして回収されたペットボトルは、リサイクルされることで衣料品や包装用パッケージなどに形を変えて再生利用されます。また、容器や包装系の使用済みプラスチックは、焼却の際に生じる熱エネルギーを活用(回収)する「サーマルリサイクル」の燃料として使われるケースが多くあります。
3Rをより意識の高い取り組みに変えた背景
「3R」という言葉自体はすでに広く知られており、広義のごみ問題を解決するうえでは「重要な考え方」として定着した感があります。しかし、時代の変化に合わせて、「3R」の考え方もここ数年で少しずつ変わってきています。
この背景にあるのが、「SDGs」です 。SDGsは、「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標」として、2015年9月の国連サミットで採択されたスローガンおよび概念のこと。「17のゴール(大目標)」と「169のターゲット(小目標)」が示されており、なかには世界的なごみ・資源問題に関するテーマもあります。
今日ではごみ問題にかかわらず、広義の環境問題がこのSDGsと関連づけて議論されるケースも多くあります。また、ESG投資(※)という言葉が誕生したように、ビジネス・企業活動においても環境問題への向き合い方は無視できないものになってきました。こうした流れによって、3Rはより高度な、そして意識の高い取り組みへ向かっていると言えるかもしれません。
※ESG投資:「環境」「社会」「ガバナンス」の観点から企業の取り組みをチェックして投資先を決める考え方
「並列」ではない!? 覚えておきたい3Rの優先順位
3Rは「まとめてひとつのもの」としてとらえられがちですが、3つの「R」にはそれぞれ異なる行動や心がけが定義されています。このことから、3Rを実践するにあたっては、その優先順位についても十分な理解が必要です。
1:リデュース
「過剰、余剰だと思われるものを可能な限り抑制すること」。3Rにおいて最も優先順位が高いのが、リデュースです。リデュースを適切に行えば、ごみの排出量そのものを抑制することにつながります。
事業所視点で考えた場合、リデュースに関しては製品の開発段階から強く意識する必要があります。この工程はリユースやリサイクルの工程よりもタイミングが早いため、とりわけ製品の製造・販売を行う事業所が日々の業務で強く意識することが大切です。
2:リユース
「使えるものは繰り返し使うこと」。リデュースの次に優先順位が高いのは、リユースです。これは、「使わなくなったものを ごみにしない」という観点において重要と言えます。
リユースと上述のリデュースは、「ごみの排出を抑えられる」という点でリサイクル以上に重要性が高く、「2R」と呼ばれることもあります。
3:リサイクル
3Rにおける「最終の手段」がリサイクルです。リサイクルには、本来ならごみとして捨てられてしまうものを再生資源やエネルギー源として「再利用する」という目的があります。
限りある資源の有効活用という点で、リサイクルは最後の砦と言えます。また、事業所にとって最終的に排出される廃棄物や資源物のリサイクルを行う重要性は高く、そのために資源の回収・分別システムの確立などが求められます。
優先順位の重要性
リデュースによってごみの排出自体を徹底して抑制し、さらにリユースも並行して実施できれば、リサイクルを行う機会もおのずと減少していくはずです。このように上流から取り組んでいくことで、下流の取り組みの負担を減らし、環境負荷の低減を図ることができます。
「ごみの排出抑制・再利用・資源化などを効率的に行う」という点においても、この優先順位を正しく理解し、順守することの重要性は非常に高いのです。
日本が抱えているリサイクルの課題
日本はごみやその取り扱いに関わるさまざまな課題を抱えており、その解決手段のひとつとして提唱されているのが3Rです。続いては、3Rを徹底すれば解決することができるかもしれない、現在の日本が抱えるリサイクルの課題を見ていきましょう。
2040年には国内の埋立地がごみで満杯!
日本では埋立地を利用したごみ処分を長きにわたって行ってきましたが、国土が狭いこともあり、埋立地に利用できる土地が限られているという課題はかねてから指摘されていました。
環境省が2018年に発表した「日本の廃棄物処理 」に記載されている「最終処分場の施設数と残余年数の推移」によると、2016年の時点でごみの最終処分場(埋立地)の残余年数は「20.5年」と推測されています。
この残余年数は推測値であり、毎年若干変化していますが、おおむね20年前後で推移しています。これを現実としてとらえると、2040年には国内の埋立地が満杯になってしまうということです。
中国への「リサイクル可能なごみの輸出」が禁止に!
ごみの取り扱いに関する課題には、すでにその影響が私たちの生活におよび始めているものもあります。その代表例として挙げられるのが、「中国へのごみ輸出禁止」です。
2017年ごろまで、日本を含むいくつかの先進国は、プラスチックごみを中国へ輸出し、中国国内でリサイクルされていました。しかし、その中国が2017年にプラスチックごみの輸入を禁止。年間輸出量の半分ほどを中国に依存していた日本は、国内でリサイクル作業を行わなければならなくなりました。
2018年6月、環境省は事業者と一般の消費者に向けて、プラスチック資源循環戦略を打ち出します。2020年にはレジ袋の有料化が実施され、日本全体でプラスチックごみの排出や3Rへの関心が高まるきっかけになったのは記憶に新しいでしょう。
リサイクル率の向上が喫緊の課題
日本には、「ごみのリサイクル率が低い」という課題もあります。環境省の発表をもとに国立環境研究所が作成したデータによると、日本におけるごみのリサイクル率は2020年の段階で約27% となっています。
国内のリサイクル率に関しては、ペットボトルが80%を超えているといったポジティブな一面もありますが、全体的にはネガティブな面のほうが多く、リサイクル率の向上は喫緊の課題として挙げられます。
長期的に表面化する生活への影響とは?
これらの課題について考える際は、「それを解決できなかった場合に表面化する生活への影響」を想像してみることが大切です。例えば今、使用されている埋立地が本当に2040年で満杯になった場合、新たな埋立地を確保するために多額の税金が使用されるでしょう。その財源確保のための増税や、事業所から出る廃棄物処理費用の値上がりが現実になるかもしれません。
また、ごみにはそれ自体に環境への悪影響を及ぼす性質があります。正しい方法で処分されなかったプラスチックごみが海に排出されれば、マイクロプラスチック化して海洋生物の体内に取り込まれることが考えられます。その結果、海洋生物の絶滅や海産物の減少などが引き起こされ、価格の高騰や関連製品の生産停止などに発展する恐れもあるでしょう。ごみ問題は、経済活動にも影響を及ぼすリスクがあるのです。
まとめ
ごみの取り扱いに関する問題は、世界共通のテーマです。しかし国内に目を向ければ、埋立地の残余年数、海外に依存していたリサイクルなど独自の問題も表面化しつつある日本の場合は深刻で、3Rを意識しながら状況の改善に務めていくことが急務となっています。
廃棄物の収集・運搬・処理を行っている千葉企業では、業界のエキスパートとして3Rを重視した高水準な取り組みを日々行っています。「最適なリサイクル」を実現するため、排出元から収集運搬、リサイクルまでを調査・研究しており、事業所に合わせたリサイクル処理をご提案しております。
3Rやリサイクルに興味がある企業様、実践したい企業様は、お気軽にご相談ください。