コラム
「脱炭素社会」ってどんな社会?日本の現状と、私たちが取り組むべきこと
環境問題
2021/10/11
気候危機や環境汚染は、世界的な課題であり問題です。重要なのは、地球環境を私たちの手でこれ以上壊さないこと。そのために、環境問題は「SDGs(世界で取り組む持続可能な開発目標)」の17の目標にも掲げられており、日本をはじめさまざまな国で環境保全の取り組みが実施されています。
もちろん、企業活動においても環境に配慮することは必要であり、環境保全に取り組むことは企業価値を高めることにもつながります。この記事では、今日において取り組む企業が増えているテーマ「脱炭素化」について解説します。
私たちにとって「脱炭素化」が必要な理由
そもそも「脱炭素化」とはどのような意味なのでしょうか?そしてなぜ脱炭素化が求められているのでしょうか?
脱炭素化とは
「地球温暖化をこれ以上加速させないために、温室効果ガスの排出実質ゼロにしよう」というのが、脱炭素化の考え方です。「カーボンニュートラル」とも呼ばれます。
気候危機の原因である「地球温暖化」は、温室効果ガスと呼ばれる気体が原因です。このガスが地球を包み込むことで、温室のなかのように温まりやすく冷めにくくなるため、地球全体の温度が上昇してしまいます。脱炭素化は、こうした温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を抑制しようという考え方です。
なお、脱炭素化という言葉に含まれる「炭素」には、二酸化炭素だけでなくメタンや一酸化二窒素、フロンガスなどの温室効果ガスが含まれています。いずれのガスも炭素原子(C)を含む構造となっているため、「脱炭素化の対象」と言えますが、温室効果ガス全体の4分の3以上を占めているのは二酸化炭素なので、「温室効果ガス削減=二酸化炭素の削減がメイン」ととらえても差し支えないでしょう。
脱炭素化の流れ1:京都議定書
地球温暖化のリスクについては、20世紀から議論されてきました。1997年に日本の京都で行われた「地球温暖化防止京都会議(COP3)」では、6種類の温室効果ガスについて、先進国に対して法的拘束力がある排出削減の数値目標などを定めた「京都議定書」が採択されています。
排出削減対象となった6種類の温室効果ガス
- 自然界にもともとあるガス:二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(亜酸化窒素N2O)
- 人為的に作られたガス類:ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)
現在はこの6種類に三フッ化窒素(NF3)が加えられ、7種類となっています。
脱炭素化の流れ2:パリ協定
京都議定書の採択から18年後の2015年には、「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」がフランスのパリで開催されました。ここで結ばれた協定を、「パリ協定」と言います。パリ協定では、気温上昇を産業革命以前より2℃、可能なら1.5℃未満に抑えるという努力目標を掲げました。
また、パリ協定では先進国に限らず、参加したすべての国に対策を求めました。5年ごとに削減目標を更新報告することを求めた、今日における地球温暖化対策の国際的な枠組みと言えます。
人間が社会生活を営めなくなってしまう恐れも
気候危機の大きな原因である地球温暖化は、国際社会における最重要課題です。しかし、パリ協定によって提示された削減プランでは「1.5℃未満に抑制する」という目標を達成することは難しいと考えられています。むしろ、世界の平均気温は産業革命前に比べて3℃上昇してしまうとさえ言われているのが現状です。このままでは、地球温暖化によって人間が社会生活を営めなくなってしまうかもしれない――。現時点では、そんな可能性まで危惧されています。
日本の「脱炭素化」の現状
では、日本は脱炭素化に対してどのような取り組みを行っているのでしょうか。また、その取り組みはよい結果をもたらしているのでしょうか。
日本の温室効果ガス排出量の推移
国立環境研究所の温室効果ガスインベントリでは1990年度以降、日本の温室効果ガス排出量を算出しています。環境省はこれをもとに、毎年度「温室効果ガス排出量」を報告しています。
「2019年度(令和元年度)温室効果ガス排出量」によれば、日本では温室効果ガスの排出量の算定を開始した1990年から2000年代前半まで、6種類の温室効果ガスの排出量は増加の一途をたどっていました。その後も排出量は増減を繰り返し、減少傾向への転換はなかなか見られません。
しかし、2010年代に入ってから4年連続で増加したのちは、2013年度の14億800万トンをピークに6年連続で減少。2019年度には、12億1,200万トンまで減少しました。これは、温室効果ガス排出量を算定し始めた1990年度以降で最少の排出量です。2019年度の温室効果ガス排出の内訳は、91.4%を二酸化炭素(CO2)が占めており、エネルギー起源のCO2だけに絞っても84.9%となっています。
非エネルギー起源のCO2には、産業廃棄物など廃棄物分野(ごみ)から排出されたCO2も含まれています。他の温室効果ガスをCO2換算したものと合わせると、2019年度の廃棄物分野の排出量は2,040万トンでした。廃棄物分野から排出された温室効果ガスは全体の1.6%であり、1990年度に比べて31.2%減少しています。
日本のこれまでの取り組み
2008年6月に開催された洞爺湖サミットの際、福田首相(当時)は「日本は2050年までに(CO2量)60~80%の削減で低炭素社会を目指す」と表明しました。しかし、直後の9月にリーマンショックが発生したため、日本は経済回復を優先。さらに、2011年3月の東日本大震災によって、日本政府の気候変動対策は完全に停滞してしまいました。
そのため今日でも、石炭・原子力の可否や、自然エネルギー普及施策をするかどうかといった、初歩的な論議にとどまったままです。温室効果ガスを排出しない、再生可能エネルギーへの転換を目指した政策が具体的に示されないまま、10年以上が経過してしまいました。結果、2015年のパリ協定で日本は、「2030年までに温室効果ガスの排出を2013年度比で26%削減」という、消極的な削減目標を掲げるに至っています。
脱炭素化への転換
菅首相(当時)は2020年10月に行った所信表明演説のなかで、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。地球温暖化により、さまざまな気候危機が生じている現状をふまえ、限られた時間のなかで温室効果ガスの排出をゼロにするための「着実な取り組み」が求められています。
「脱酸素社会」へ向けた取り組み事例
脱炭素社会の実現に向けて、国内外ではさまざまな取り組みが行われています。以下では、代表的な4つの取り組みをご紹介します。
エネルギー源の見直し
脱炭素化における最も本質的な対策は、エネルギー源の見直しです。資源エネルギー庁の「エネルギー白書2020」によれば、2017年度の一次エネルギー国内供給に占める化石燃料の割合は91.0%。日本では、他国に比べて化石燃料への依存度が高い状況にあります。
太陽光発電や水力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーや自然エネルギーへと切り替え、余剰分は水素エネルギーに転換していければ、CO2排出の大幅な削減が可能となるでしょう。エネルギー安全保障の観点からも、一次エネルギーを自給自足が可能な再生可能エネルギーや自然エネルギーと水素エネルギーへの組み合わせに切り替えていく必要があります。
二国間クレジット制度の推進
「二国間クレジット制度」とは、先進国が発展途上国に温室効果ガス削減のための技術や資金を提供し、発展途上国が達成した温室効果ガス削減成果を二国間で分け合う仕組みです。エネルギー効率の高い機器の導入や自然エネルギーとディーゼルのハイブリッドシステムの導入、温室効果がCO2の何倍も高いフロンガス類を使わない機器の導入などが、実際に行われています。
産業廃棄物関係では、廃熱利用やリサイクルの取り組みがあります。2021年1月現在、日本はモンゴルやバングラディッシュ、フィリピンなどの17ヶ国と二国間クレジット制度を締結しています。
グリーンファイナンス
「グリーンファイナンス」は、温室効果ガスの排出削減をはじめとした環境によい施策を行っている企業に対し、投資を通じて事業資金が回りやすいようにする仕組みのこと。脱炭素社会を目指す取り組みとして注目されています。
この取り組みを推進するのが、一般社団法人グリーンファイナンス推進機構です。この法人は、低炭素社会の創出や持続可能な社会の実現に寄与することを目的に設立されました。投資ファンド「グリーンファンド」の運用や債券「グリーンボンド」の発行支援によって、脱炭素化を事業として推進しています。
ESG投資
ESG投資は、投資する企業の取り組みを「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の観点からチェックし、それぞれに寄与しているかを考慮した投資のこと。企業経営のサステナビリティを評価するという点から、注目されています。
ESG投資がさらに浸透すれば、将来的には「ESGに配慮していない(取り組みに積極的でない)企業は、消費者や投資家、取引先から選ばれなくなる」というリスクが高まると考えられます。
まとめ
循環型社会の確立を目指す千葉企業では、廃棄物の処理と再資源化を念頭に、事業所の産業廃棄物や、一般家庭から排出される廃棄物の収集運搬処理業務を行っています。
環境マネジメントシステムに関する国際規格「ISO14001」の認証や、東京都の産業廃棄物処理業者における優良性認定制度の認定も取得。環境保全活動を推進しつつ、さらに比較・調査・研究に努めて、「すべての廃棄物に適したリサイクルシステムの構築」の実現を目指しています。