コラム

プラスチックをリサイクルしたい!3つの選択肢のメリットとデメリット

リサイクル

2021/10/20

プラスチックをリサイクルしたい!3つの選択肢のメリットとデメリット

2017年、中国がプラスチックごみの輸入規制に踏み切りました。そして2021年からは、使用済みプラスチックなどの全面的な輸入禁止措置を実施し、手続きの受付を終了することがすでに発表されています。主な受け入れ先だった中国の措置を受け、日本をはじめとする多くの国は「自国でプラスチックごみをリサイクルする方向」に舵を切ることになりました。

日本で取り組まれているプラスチックリサイクルの手法は、大きく分けると3種類あります。この記事では、それぞれのリサイクルの仕組みや特徴について解説します。違いを理解し、メリットとデメリットを踏まえて正しく選択できるようにしましょう。

ケミカルリサイクルについて

「ケミカルリサイクル」とは、使用済みの資源を文字通り「化学的」に分解し、他の化学物質へ再生して利用する手法です。廃棄食用油を石鹸にしたり、家畜の糞尿からバイオガスをつくったりといった形で、さまざまな廃棄物がケミカルリサイクルを経て活用されています。

以下では、使用済みプラスチックのリサイクルに用いられる技術をご説明します。

コークス高炉原料化

使用済みプラスチックを高炉で使う還元剤に再生する技術です。製鉄所では、鉄鉱石(酸化鉄) とコークス(石炭を乾留して炭素のみ残した燃料)、副材料を高炉で化学反応させ、鉄を生産しています。コークスは炉内を高温にするとともに、鉄鉱石の主な成分である酸化鉄から酸素を奪う(還元)役割を果たします。

石油から作られているプラスチックの主成分は炭素と水素で、燃えると高温を発します。コークスの代わりにプラスチックを還元剤として利用することで、貴重な天然資源である石炭の節約につながるだけでなく、水素の働きによってCO2を削減できるのも大きなメリットです。

加えて、処理過程で発生する炭化水素油がプラスチックなどの化学原料になる点や、コークス炉から生じる炉ガスを発電などに利用できる点もメリットと言えます。

油化

プラスチックは石油でできているため、化学分解によって製造と逆のプロセスをたどれば油(液体)に戻すことが可能です。油化の技術開発は1970年台後半から進められ、現在はほぼ確立されている手法と言えます。

ガス化

プラスチックをガス化し、化学工業の原料(炭化水素や一酸化炭素、アンモニアや水素など)を抽出する技術です。他の原料や手法ではリサイクルが難しい混合状態のものや、複合プラスチック素材で構成された使用済みプラスチックが対象となります。

原料・モノマー化

廃棄物に化学的な処理を行い、原料や分子(モノマー)に分解して再び製品に活用する技術です。代表的な例としては、ペットボトルやプラスチック製の容器が挙げられます。

使用済みペットボトルは衛生面やにおいの観点から清涼飲料や調味料用ボトルの原料には向かないとされてきましたが、ポリエステル原料に戻したあと、再度PET樹脂にする方法であればデメリットが解消されます。PET樹脂を新たに作るよりも資源の節約が可能です。

ケミカルリサイクルのメリット・デメリット

メリットは、プラスチックごみのケミカルリサイクルを行うと、物性を変えた資源の循環活用が可能になること。廃棄物を資源化して製品に利用できれば、またそれらの製品が廃棄物となった際に「資源」となり、廃棄物環境負荷の軽減につながるからです。限りある天然資源の消費を抑制する効果も期待できます。

しかしその一方で、ケミカルリサイクルは非常に高度な処理が必要になるため、プラスチックの種類と物性(軟質・硬質など)には向き・不向きがあり、その見極めが重要になってきます。

マテリアルリサイクルについて

マテリアルリサイクルについて

世の中で最も浸透しているリサイクル手法が「マテリアルリサイクル」です。廃棄物や資源物を原料に戻して、新しい製品を作り出す方法を指します。
身近なところでは、飲み終わった飲料缶を溶かして新たな飲料缶を作ったり、古新聞や古雑誌を溶かしてトイレットペーパーにしたりする例が該当します。リサイクルに求められる「限りある資源の再生循環と有効活用」を最も身近に実現しているのが、マテリアルリサイクルなのです。

使用済みプラスチックのマテリアルリサイクル

使用済みの缶や紙だけでなく、プラスチックもマテリアルリサイクルの対象です。使用済みプラスチックのマテリアルリサイクルは、以下のような流れで行われます。処理によって粒状にされた使用済みプラスチックは、新しい製品の原料として使われます。

1 樹脂選別・不純物の除去
2 粉砕し・洗浄
3 フレークを造粒機で溶融

マテリアルリサイクルでは、手順1が重要になります。さまざまな種類のプラスチックや不純物、異物などが混ざっていると、選別に膨大な手間がかかってしまうからです。選別が万全でなければ、再生物の品質が低下してしまいます。現在、マテリアリサイクルの大半が工場系産業廃棄物のプラスチックか使用済みペットボトルです。

マテリアルリサイクルの事例

プラスチックを原料に作られるものは多種多様で、日常生活のさまざまなところで目にすることができます。例として、どのような廃材がどんな製品にリサイクルされるかを確認しておきましょう。

・使用済みペットボトル:衣料品(作業着やユニフォームなど)
・使用済みペットボトルキャップ:文房具(ボールペンやクリアファイル、名刺など)
・容器包装廃材(トレーやレジ袋、菓子の袋など):ゴミ袋や水切りネット、植木鉢など
・農業用廃材(ビニールハウスのフィルムなど):レジ袋やゴミ袋、水切りネットなど
・その他の使用済みプラスチック:洗剤用ボトル、ベンチ、フェンス、遊具、防草シート、土木シート、コンテナ、パレット、建設資材、自動車部品、土木建築、住宅、公園、道路、鉄道、農林水産関係の用品など

マテリアルリサイクルのメリット・デメリット

マテリアリサイクルのメリットは、廃棄物を「国産の資源」として確保できる点です。日本は、プラスチックの原料である石油のほとんど(約99%)を輸入に頼っている現実があります。これは、輸入先の国にとっては外交の切り札にもなり得る武器です。リサイクルによって資源を国内で循環することは、限りある資源を有効活用できるだけでなく、日本の国力を高めることにもつながります。

一方、「単一素材であること」がリサイクルの基本条件であるため、ケミカルリサイクルと同様に分別や異物除去の徹底が必要な点(そのために手間やコストがかかる点)はデメリットと言えます。プラスチックごみのマテリアルリサイクルを拡大していくには、分別方法や識別・選別技術の新しいシステム開発が求められるでしょう。

サーマルリサイクルについて

サーマルリサイクルについて

あまり知られていませんが、実は日本で最も普及しているリサイクル手法が「サーマルリサイクル」です。廃棄物を固形燃料にする、あるいは廃棄物の焼却時に生じる熱(サーマル)をエネルギー回収して利用する手法です。

サーマルリサイクルは「ごみ発電」とも呼ばれ、温水(プールや浴場)の熱源や暖房、電気などに使用されたりしています。ごみ焼却施設の近くに通年利用できる温水プールを設置している自治体が多いのは、このためです。

また、製紙工場などでは、マテリアルリサイクルが困難な古紙とプラスチックごみを原料にした「RPF」と呼ばれる高カロリーの固形燃料が、石炭の代替燃料として利用されています。

サーマルリサイクルのメリット・デメリット

分離や選別の手間が比較的簡便であり、さまざまな種類のプラスチックが混ざっていたり、プラスチック製品を含む廃棄物であったりしても、リサイクル可能な点がメリットです。ごみを焼却することでリサイクルができるため、廃棄物を処理する側にとっては最も合理的なリサイクル方法と言えるかもしれません。

サーマルリサイクルでは、廃棄物を「燃料やエネルギーとして使うこと」によって石油燃料の使用を抑えられるのが大きな特長です。実際、日本のプラスチックリサイクル率(有効利用率)の内訳を見てみると、サーマルリサイクルの割合が多いことがわかります。

・ケミカルリサイクル・・・4%
・マテリアルリサイクル・・・26%
・サーマルリサイクル・・・70%
出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識2021 」

デメリットは、大量に二酸化炭素が発生すること。廃棄物の焼却技術が進んだことで、近年では有毒ガスやダイオキシンの発生も大幅に抑えられるようになってきています。とはいえ、ゼロとまではいかないのが事実であり、わずかながらも発生してしまう点はデメリットと言わざるを得ません。

世界ではリサイクルとみなされないケースも

日本では、手間をかけずに廃棄物が処理でき、副産物を有効利用できる「合理的な方法」とされているサーマルリサイクルですが、欧米では一般的に「燃焼処分」はリサイクルの概念に含まれません。そのため、世界的にはサーマルリサイクルを「リサイクル方法」にカウントしないことが多いのが現実です。

サーマルリサイクル率の高い日本では、他国に比べてごみの分別にあまりこだわらない人が多いと言われています。その背景には、「どうせ燃やすのだから分別しなくてもよいのでは」という心理があるのかもしれません。しかし、サーマルリサイクルにおいてはその考えでよくても、それ以外のリサイクル方法においては「廃棄物を正しく分別する」ことが極めて重要です。その点を覚えておきましょう。

まとめ

資源は無限ではありません。正しい知識と高い意識を持ち、使用済みプラスチックのリサイクルと上手に向き合っていくことが大切です。

千葉企業では、プラスチックごみを国内で偏りなくリサイクルするため、使用済みプラスチックに独自のランクを設定し、そのランクに応じて適切なリサイクル方法を選択しています。

・Aランク(単一で汚れのないもの):マテリアルリサイクル
・Bランク(混合で汚れのないもの):ケミカルリサイクル
・Cランク(混合で汚れているもの):サーマルリサイクル

  • AランクAランク
  • BランクBランク
  • CランクCランク

 

また、各事業所の廃棄物を適切にリサイクルするために、最適な手法やフローなどをご提案しております。産業廃棄物のリサイクルをお考えの方は、お気軽にご相談ください。

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